はじめに:11年以上のモロッコ滞在経験
はじめまして。一般会員の倉冨健治です。
私は、これまでに通算11年以上のモロッコ滞在経験があるので、その一部を皆様にご紹介したいと思います。
モロッコとの出会い:青年海外協力隊選考試験
昭和59年1月、私は青年海外協力隊の隊員選考第一次試験の会場にいました。応募職種は、第一希望が「理数科教師」で、第二希望が「野球」でした。理科の教員免許を取得していましたし、高校と大学では硬式野球部に所属していたからです。しかし、これらの職種の問題を読んでも適切な答えが思い浮かびませんでした。試験が始まってしばらくして、試験監督の方がおっしゃいました。「第一希望、第二希望の職種ではなく、他の職種の問題を解くことも可能です」と。問題の冊子には、他の職種の問題もあったので、ページをめくってみると、「地質学」という職種が目にとまり、結局、「地質学」で受験しました。
昭和59年2月、私は青年海外協力隊事務局の隊員選考第二次試験の会場にいました。その時、初めて、「地質学」隊員の派遣先国が「モロッコ」であることを知りました。技術面接の際、試験官の方から聞かれました。「あなたは第一次試験の際、職種を変更されていますが、博物館に興味があったからですか」と。「隊員要請背景調査」には、配属先にある「自然史科学博物館」の改善についても触れられていたからでした。私は、正直に「博物館にはあまり興味はなく、博物館を訪れたこともほとんどありません」と答えました。
昭和59年3月、私は、合格通知を受け取りました。

いざモロッコへ:青年海外協力隊昭和59年度第二次隊
昭和59年8月中旬から約3か月間、長野県駒ヶ根市にある「青年海外協力隊駒ヶ根訓練所」で、語学、国際協力や開発援助に関する講座、野外訓練等の訓練を受け、フランスのヴィシーにおける語学訓練を経て、昭和60年1月16日にラバトに着任しました。
私の前任者はモロッコ派遣の初代「地質学」隊員で、活動期間を延期されたことから、しばらく一緒に活動することになりました。「駒ヶ根訓練所」では、隊員の活動報告書を読むことができました。従って、私の前任者が「恐竜の足跡」を研究されていることは知っていました。そして、私は、「恐竜の足跡」の研究を引き継ぐのだろうと思っていました。前任者と一緒に、初めて、配属先である「エネルギー鉱山省」の「地質部長」にお目にかかった際、部長は、「あなたは大学の卒業論文で、火砕流の古地磁気的分類をしたので、モロッコの火山研究のまとめを担当してほしい」とおっしゃいました。

モロッコの火山:モロッコに火山があるの?
晴天の霹靂。実際のところ、「恐竜の足跡」の研究を引き継ぐにしても、「モロッコの火山研究のまとめ」を担当するにしても「ゼロ」からのスタートです。上司の指導や同僚からの助言を得つつ、一歩一歩進むしかありません。モロッコの火山についての論文は数本しかありませんでした。包括的な論文が一本と地域的な研究論文が三、四本でした。
ところで、モロッコに火山があるのでしょうか? もちろん、活火山はありません。火山活動は少なくとも数千万年以上過去に遡らなくてはなりません。では、モロッコの火山はどこにあるのでしょうか? 論文には、アンチアトラス山脈の北東部、オートアトラス山脈との間に位置するシルワ山、ワルザザートの東方に位置するサハロ山、北部のリフ山脈などが記述されていました。協力隊員の任期は2年間ですが、現地語学訓練も含まれるので、実質的な活動期間は約1年10か月です。包括的な論文を中心に他の地域的研究論文の内容を盛り込みつつ、「モロッコの火山研究のまとめ」を作成、また、「自然史科学博物館」の改善計画に活かせるよう「博物館の写真付き現況図」を作成して任期を終えました。

モロッコにおける地震:どうしてモロッコで地震が発生するのでしょう?
モロッコに関心を持っていらっしゃる方であれば、2023年9月にマラケシュ南西約70Kmのオートアトラス山脈内で大きな地震が発生したことを記憶されていることでしょう。その約20年前の2004年2月にはアルホセイマ地域で大きな地震が発生しましたし、1960年2月にはアガディールで大きな地震が起き、街はほぼ壊滅状態となりました。
モロッコの中央に東北東から西南西に横たわる三つのアトラス山脈をそれぞれ東北東と西南西へ延ばすとどこに辿り着くでしょう。東北東へ伸ばすとベスビオス火山で知られるイタリアに着きます。そして、西南西へ延ばせば、2011年9月に噴火したことでニュースになったクンブレ・ビエハ火山があるスペインのカナリア諸島に着きます。
アフリカ大陸は比較的安定した大陸ですが、このように一歩下がってこの地域の地図を見ると、モロッコに火山があったり、地震が発生したりすることも納得いただけるのではないでしょうか。

終わりに:モロッコは地質学的観点からとても魅力的な国
火山や地震の話をしましたが、モロッコの山岳地域は植生が少なく、地層や断層などを見ることができます。実際にアンモナイトや直角石の化石が含まれている地層や恐竜の足跡を見ることもできます(ただし、恐竜の足跡を見ることができる地点は限られます)。次回、モロッコを訪問され、アトラス山脈を縦断したり、カスバ街道を通行されたりする機会があれば、是非、地質学的観点からモロッコの魅力を発見していただければと思っています。
なお、青年海外協力隊員時代の写真は現在手元にないのでご覧いただけないのが残念です。
機会があれば、モロッコの火山などの写真をコラムでご紹介したいと思います。