モロッコ関連情報

INFORMATION

森下仁道のアフリカ挑戦記 #1

2026年05月15日 17:05

この度モロッコのサッカーリーグで活躍されている森下さんから現地の様子など寄稿頂くこととなりました。本稿は不定期ですが、しばらくの間連載の予定です。モロッコのサッカーは、2030年のワールドカップ開催を控え盛り上がりを見せています。本稿に関する感想などもお寄せいただけますと幸いです。(2026年5月13日、事務局)

 

「なんでアフリカなんですか?」

これまで何度も聞かれてきました。
正直、自分でも不思議に思うことがあります。

なぜ私は、日本から最も遠いとも言える大陸で、こんなにも必死にボールを追い続けているのか。

ただ一つ言えるのは、私のサッカー人生は、”強者”として歩んできたものではなかった、ということです。

私は岡山県倉敷市出身のプロサッカー選手、森下仁道です。現在はモロッコでプレーしています。

「このままでは埋もれる」

筑波大学蹴球部時代、私の周りには日本トップクラスの選手たちがいました。

特に強烈だったのが、三笘薫選手の存在です。

同じ環境でプレーしながら、「世界に行く選手」はこういうレベルなのか、と痛感させられました。

もちろん悔しかったです。でも同時に、冷静にもなりました。

「同じ土俵で勝負していたら、自分は埋もれる」

それが当時の率直な感覚でした。

だから私は、”弱者の戦略”を考えるようになりました。

自分は何で勝負するべきなのか。
どこに行けば、自分だけの価値を作れるのか。

そこで辿り着いたのが、「アフリカ」でした。

まだ誰もやっていない。
日本人選手がほとんど挑戦していない。
だからこそ、唯一無二になれる可能性がある。

私は、「アフリカで結果を出し、日本へ逆輸入される選手になろう」と考えました。

今振り返れば、かなり生意気な発想だったと思います。

でも、当時の私は本気でした。

ザンビアで、人生が変わった

2019年、私はザンビア1部リーグ「FC MUZA」でプロキャリアをスタートさせました。

ただ、実際にアフリカへ行ってみると、そこは想像を遥かに超える世界でした。

停電は当たり前。
水が出ない日もある。
価値観も文化も、日本の常識は全く通用しない。

正直、最初は毎日必死でした。

でも、不思議だったんです。

怖いはずなのに、なぜか心が躍っていた。

むしろ、「生きている」という感覚が、日本にいた時よりも圧倒的に強かった。

極端に言えば、”生死”をより身近に感じる環境でした。

何が起こるかわからない。
明日どうなるかわからない。
だからこそ、一日一日を本気で生きるしかない。

私はその”サバイバル感”に、完全に魅了されました。

そして気づけば、「アフリカに特化した日本人サッカー選手になろう」と本気で決意していました。

「アフリカ最高峰」モロッコへ

ザンビアからガーナへ。
そして現在はモロッコ。

少しずつ、自分の中で”アフリカを登っている”感覚があります。

ガーナ、モロッコでは、日本人・アジア人として初めてプロ契約を結ぶ選手となりました。

もちろん簡単な道ではありません。

怪我もありました。
言葉も文化も違う。
「外国人選手」という立場で結果を求められるプレッシャーもあります。

でも、だからこそ面白い。

異文化の中でどう生きていくのか。
どう信頼を勝ち取るのか。
どう結果を残すのか。

毎日が、自分自身を試されている感覚です。

サッカーだけでは終わらなかった

そして、アフリカでの挑戦は、いつしかサッカーだけではなくなっていきました。

ありがたいことに、たくさんのご縁をいただき、自分一人では絶対にできなかったことを実現できるようになっていきました。

所属クラブへの日本企業スポンサー誘致。
現地の子どもたち向けのサッカー大会開催。
日本コミュニティや現地の方々との協働。

特に、現地の孤児院の子どもたちとサッカーを通して交流した際に、「将来はジンドウみたいな選手になりたい」と言われた時は、「自分がここに来た意味」を強く感じました。

私は決してスーパースターではありません。

でも、”弱者”だったからこそ、人との繋がりを大事にしてきました。

一人では戦えないことを知っていたからこそ、支えてくださる方々への感謝を忘れずにここまで来ました。

もしかすると、これまで自分が積み重ねてきたことは、全て「弱者だったからこそできたこと」なのかもしれません。

まだ、道の途中

私はまだ何も成し遂げていません。

アフリカチャンピオンズリーグ出場という目標もありますし、日本とアフリカを繋ぐ存在になるという夢もあります。

ただ、少なくとも一つだけ確信していることがあります。

それは、「自分にしか歩めない道を歩いている」ということです。

これから先、モロッコで何が起こるのか。
この巨大な大陸でどんな出会いが待っているのか。
自分自身、まだ全く想像できていません。

でもだからこそ、ワクワクしています。

本連載を通して、日本人サッカー選手として実際にモロッコで生活する中で感じた「リアルなモロッコ社会」や、「異文化の中で日本人として挑むこと」について、もっと深く書いてみたいと思います。

森下仁道の挑戦を、これからも見守っていただけたら嬉しいです。

最後になりますが、このような機会を提供くださった日本モロッコ協会の皆さまに、心から感謝申し上げます。